窯業界の歴史を変える「デジタル技術」を活用したものづくりに挑戦！

日本でも有数の温泉地としても有名な佐賀県嬉野市で作られる陶磁器・肥前吉田焼。「224porcelain」はその小さな産地・肥前吉田に生まれた磁器のブランドです。作るものは食器だけに止まらず、販売形態も卸から他社ブランド製造（OEM）、小売までと幅広く事業を展開しています。通常、一般的な窯元はショップを持っていないのですが、商品を見せる場所が必要だと思い、店舗も運営しています。佐賀県で焼き物と言えば、唐津・伊万里・有田が古くから陶磁器の産地として有名ですが、ここ吉田の焼き物も歴史があります。残念ながら、有田焼ほど有名ではありませんが、その知名度が無いことを逆手にとり、「自由なものづくり」に挑戦しています。私自身、伝統的な焼き物作りを10年ほど学んできたのですが、その伝統を受け継ぎながらも、全く新しい焼き物を作れないかと取り組んでいます。

代表　辻 諭 様

デジタル技術で陶磁器の製造工程を革新

型は上部と下部の2つのパーツが必要になる。デジタルデータにより、精細な表現が可能に

佐賀県窯業技術センターの副島さんが、NC切削による陶磁器の技術開発を研究されていて、私にも紹介してくれました。それを最初に見たとき、非常に大きな衝撃を受けました。デジタルデータを活用し、切削することで、短納期化、高品質化、低コスト化が可能になることがすぐに理解できました。間違いなくこの方法が業界のスタンダードになるだろうと思い、導入を決めました。最初に買ったのはSRM-20です。3D CADも独学で勉強し、試してみたところ、驚くほど早く焼き物を作ることができました。伝統的な焼き物の製造工程は非常に複雑で、完成するまでに時間がかかります。まず最初に原型を作り、その型を作るためには、型屋さんに発注しないといけません。型屋さんもいろんな窯元の仕事をしていますから、すぐに取り掛かることはできません。型ができるまで、だいたい10〜14日間はかかります。型ができても、材質が石膏なので、乾かすのに2〜3日間かかります。型が乾いたら、生地屋さんに依頼して、生地を作ってもらいます。その後、素焼きして、本焼きをおこないます。このように、完成までに1ヶ月ほどはかかります。

しかし、切削加工機を使えば、簡単な湯呑であれば、4日間で完成させることができます。これは非常に革新的です。しかも、スピードだけではなく、品質も非常に高い。手作りではできない細かな表現が可能になります。私のやり方では原型はデジタルデータしか存在しません。すぐに切削加工で型の製作に取り掛かります。お話したように、普通は型を乾かす時間が必要になるのですが、切削加工の場合、乾いた状態の石膏ブロックを削るので、型ができあがってすぐに鋳込みが行えます。これは従来の伝統的な焼き物の工程を知っているものからすると、驚くべきことでした。焼き物400年の歴史を変えるほどのターニングポイントになることだと思っています。

増設して生産性を向上

SRP Playerで出力している様子

SRM-20の導入後に、MDX-50を買いました。このマシンが現在の主力になっています。常に稼働していて、あまりにもヘビーな使い方をしているので、追加でもう一台購入しました。MDX-50を2台にすることで生産性がさらに向上しました。焼き物の型は「圧力鋳込み」という成型方法の場合、上下分割された2つのパーツが必要になります。以前は、順番に削っていましたが、2台のマシンで上下２つを同時に加工できますので、大幅に時間短縮をすることができました。今までならば残業しなければいけなかったのが、その必要がなくなりました。MDX-50は、オートツールチェンジャーが備わっているので、刃の交換が必要なく、非常にラクですね。また、付属のCAMソフトSRP PlayerはSRM-20導入時からバージョンアップされて一層使いやすくなりました。

自由なものづくりに取り組む

ショップでは、224porcelain のプロダクトを中心に様々なアイテムを揃えている

切削加工機の導入は、新たな製造方法への挑戦だったのですが、それ以外にもキャラクターグッズなど新たなことにチャレンジしています。自分自身、新たなことに挑戦するのが楽しいので、これからも何事にもとらわれない自由なものづくりに取り組んでいきたいです。